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2023年10月13日公開。 2018年の『死霊館のシスター』の続編で、前作から4年後の1956年が舞台です。 シスターアイリーンとモーリスが続投し、悪魔ヴァラクがまた出てきます。
ここから先は結末まで触れます。 まだ観ていない方は、先に本編をどうぞ。
結末はどうなったのか
ヴァラクは聖ルチアの目玉を手に入れて力を取り戻します。 それを止めたのが、ワインでした。
シスターアイリーンとデブラが、目の前のワインをキリストの血だと信じる。 それによって大量のワインを浴びたヴァラクが敗れます。 1作目では本物の聖遺物「キリストの血」を使いましたが、今回は本物ではありません。 ワインをキリストの血に変えたのは、信じる力のほうです。
そこに至るきっかけが、火あぶりにされたアイリーンが燃えなかったことでした。 信仰を持っていなかったデブラが、その奇跡を目の当たりにして信じる側に回る。 そのうえでワインが血になる。 きれいな流れでした。
ヴァラクの正体
ヴァラクは元々天使でしたが、神に追放されて力を失いました。 その力を取り戻すために狙ったのが、聖遺物である聖ルチアの目玉です。
聖ルチアは、紀元前283年頃にシチリアのシラクサで生まれたとされるキリスト教の殉教者です。 拷問で目を奪われながら、奇跡によって目が無くても見ることができたと伝えられています。 日本でなじみがあるものだと「サンタ・ルチア」でしょうか。 イタリアの歌ですが、聖ルチアがシチリア生まれということでつながっています。
ヴァラクは1作目で乗っ取ったモーリスを使って各地を移動し、目玉のある学校までたどり着きました。 モーリスは移動手段だったわけです。
力を取り戻したヴァラクの後ろには、後光が差していました。 どこか不気味な色合いの後光が元天使という設定に合っていて、正直かっこよかったです。
なお、シスター姿のヴァラクは本当の姿ではありません。 神を冒涜するために、その姿をとっているという設定です。
シスターアイリーンの正体
アイリーンが火あぶりにされても燃えなかったのは、彼女が聖ルチアの子孫だからです。
聖ルチアの子孫は世界に散り散りになったと作中で語られ、その1人がアイリーンでした。 アイリーンの母親が「同じ目を持っている」と言っていたので、直接の子ではなく何世代か後ということになります。
見えないものが見えるという彼女の力も、ここから来ていました。 ヴァラクとアイリーン、双方の出自が明かされた本作は、まさに日本の副題どおり『呪いの秘密』でした。
ロレインとの関係はどうなるのか
ここで『死霊館』本編とつながります。 ロレイン・ウォーレンもまた、見えないものを見ることができました。 その力が聖ルチアの子孫に与えられるものだと本作で明かされた以上、ロレインも聖ルチアの子孫だったということになります。
しかもアイリーンを演じたタイッサ・ファーミガと、ロレインを演じたヴェラ・ファーミガは21歳差の実の姉妹です。 このキャスティング自体が、2人の関係を匂わせていたのかもしれません。
では2人はどういう関係なのか。 考えられる説を、作中の年代で検証してみます。
まず母親説。 これはなさそうです。 本作は1956年、『死霊館』1作目は1971年。 本作の直後にアイリーンが子を産んだとしても、1971年時点で15歳にしかなりません。 そもそもアイリーンは1作目で終生誓願を立てています。 宗教に生涯を捧げる誓いなので、結婚はできません。
同一人物説も、同じ終生誓願で否定されます。 エドと結婚できないからです。 さらに『悪魔のせいなら無罪。』で、エドとロレインが出会ったのはロレインが17歳のときだと語られています。 年齢が合いません。
残るのは、血のつながりだけがある遠い縁者、という線です。 同じ力を持ち、同じ悪魔と別の時代で戦った2人。 それ以上の関係は、作中では示されませんでした。
3作目はあるのか
作られるはずだ、と考えていました。 理由は『死霊館』1作目にあります。
1作目では、ウォーレン夫妻が悪魔祓いをしている映像が流れます。 その憑かれている人物こそ、『死霊館のシスター』のフレンチーことモーリスです。 これは1作目で描かれましたが、本作の終わりでモーリスはヴァラクから解放されています。 つまりどこかでもう一度憑かれないと、ウォーレン夫妻の悪魔祓いにつながりません。 話が残っている以上、続きが要るはずでした。
ところが、その後の展開は違う方向に進みました。
2025年9月5日に『死霊館 最後の儀式』が公開されます。 マイケル・チャベス監督。 世界興行は4億9,930万ドルに達し、シリーズ最高の成績になりました。 そしてこれが、ヴェラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンがウォーレン夫妻を演じる最後の作品とされています。
シリーズ自体は続きます。 前日譚『The Conjuring: First Communion』が2027年9月10日に予定されています。 ただ、『死霊館のシスター』3作目については、2026年8月の時点でも発表がありません。
そして、いちばん見たかったものは実現しませんでした。 年を取ったシスターアイリーンとロレインが、それぞれの時代から同時にヴァラクと戦う。 あるいは聖ルチアの子孫たちが集まって、1作目で大勢のシスターが祈っていた場面を現代で再現する。 そういうものを想像していましたが、ウォーレン夫妻の物語は、姉妹の共演がないまま幕を閉じました。
フレンチーの伏線は残ったままです。 そこが回収されるとしたら、まだヴァラクに会える余地はあると思っています。
完全創作だから自由にできた
『死霊館』本編はウォーレン夫妻が実際に扱った事件を基にしていて、それが怖さの土台になっています。 一方『死霊館のシスター』は完全な創作です。 これは1作目から変わりません。 悪魔ヴァラク自体は2016年の『死霊館 エンフィールド事件』が初登場ですが、シスターアイリーンとの対決もモーリスの話も創作です。
その創作であることが、本作ではむしろ強みになっていました。 演出もキャラクターも自由です。
特に良かったのが、本作で初登場したヤギの悪魔のデザインです。 本編は全体に暗いので細部までは見えないのですが、人間とヤギが融合したような、バフォメットをモチーフにしたような姿でした。 あのアンバランスさが不気味でよかった。 『エンフィールド事件』のへそ曲がり男もそうでしたが、この手のデザインが好きです。
実話ベースの本編では、悪魔は人間や人形といった器を借りた形でしか出てきません。 創作である本作は、ヴァラクを生の状態で出せます。 自分の姿を持った悪魔が出てくるぶん、恐怖が増していました。
ヴァラクの登場のしかたが毎回楽しい
このヴァラクはホラーに乗り気で、出てくるたびに期待を煽ってきます。
初登場の『エンフィールド事件』では影の姿で自分の絵画の前に立ちます。 『死霊館のシスター』1作目では、これまた影で鏡の前に立つ。 「今行くから」と言わんばかりに準備している。 用意されている恐怖がいつ来るか分からない怖さと、ヴァラクの余裕が同時に伝わってきます。
本作でも健在でした。 冒頭のフランスで神父が焼かれる場面では、煙がシスターのベールの形になって現れます。 アイリーンの前に出てくるときは、雑誌のページで自分のシルエットを作る。 この演出は、シリーズを観るうえでの楽しみのひとつになっています。 ただし今回、その表情から笑みは消えていました。
いちばんやられたのが、ソフィーがヴァラクと対面する場面です。 あの構図は『エンフィールド事件』でロレインがヴァラクと出会ったときと同じでした。
シリーズを観ている人なら気づくと思います。 気づくと、次の行動も分かってしまう。 『エンフィールド事件』のヴァラクは、姿を現したあと左に歩いていきます。 私も「この後ヴァラクは左に歩いて行くんだろう」と、したり顔で観ていました。
そうしたらヴァラクがカラスを放ってきました。 不意を突かれて椅子から5センチ浮くくらい驚きました。 完全に見破られていましたね。 前作を知っているからこそ効く仕掛けで、これには感服しました。
それでもヴァラクにまた会いたい
怖いだけの続編ではありませんでした。 ヴァラクとアイリーン、双方の出自が明かされて、『死霊館』本編ともつながった。 スピンオフでありながら、シリーズ全体の設定を一段深くしています。
完全な創作だからこそ、悪魔を生の姿で出せて、ヤギの悪魔のようなデザインも作れる。 本編が実話に縛られているぶん、こちらのほうが自由にやれている。 その自由さが、このシリーズのいちばんの持ち味だと思っています。
順番に追うなら、『死霊館のシスター』1作目を先に観てください。 『死霊館 エンフィールド事件』も観ておくと、ソフィーの場面が何倍も効きます。
ウォーレン夫妻の物語は幕を閉じましたが、フレンチーの伏線はまだ残ったままです。 要するに、ヴァラクにまた会いたい。